ニーナ・シモン 【フィーリング・グッド】その崇高なる魂のルーツ

ニーナ・シモン(Nina Simone) 本名ユニース・キャスリン・ウェイモン(Eunice Kathleen Waymon)
1933年2月21日生ー2003年4月21日(70歳没)
アメリカ合衆国ノースカロライナ州・トライロン出身
20世紀に活躍した音楽家 歌手 ピアニスト

Feeling Good (フィーリング・グッド)

ニーナ・シモンは多くのオリジナル曲を生み出しましたが、また多くのカバー曲も残しています。

Feeling Good(フィーリング・グッド)

1965年作品のミュージカル(The Roar of Greasepaint ドーランの叫び)

アンソニー・ニューリー(Anthony Newley)作詞、レスリー・ブリカス(Lesly Bricusse)作曲

(イギリスの階級社会を描いたミュージカル)

 

歌詞の内容の要約

空を飛ぶ鳥たちや、太陽

海の魚たちや 川、木々の花たち

トンボや蝶たち

そして星たちや 松の香り

それら、この自然界に神が創造された、

その存在の本分を思う存分謳歌している生き物や自然界に呼びかけ

私も同じ

自分の人生を自由に生きたい!

わかってくれるでしょ?

夜が明けて、新しい一日が始まって、そして

今こそ私は私の人生を生きる!

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神の創造物の中で、人間だけが階級社会を形作り、人種間、男女間、他にもあらゆる上下関係、奴隷社会を形作っています。

天賦の才能を与えられたニーナ・シモンでさえ例外ではなく、その社会の中で自分の存在価値や尊厳とは何か、という命題を突き付けられます。

疑問を感じることもなく、知らないうちに組み込まれてしまっている自分の生に疑問を感じたとき、私たちは真の自由とは何かを考え始めます。

ニーナ・シモンが歌うカバー曲はどれも彼女のオリジナル曲だとばかり勘違いさせるほどの独自性とルーツを感じさせます。

特に、洗練されたジャズシンガーたちのスキャットに耳慣れている人は、後半のスキャットに衝撃を受けるでしょう。

 

Feeling Good(ローリン・ヒル)

最近ユーチューブで見つけたローリン・ヒルの「フィーリン・グッド」ニーナ・シモントリビュート

後半に続くスキャットは、ニーナに強く影響されながらも同等の天才ぶりを発揮する彼女ならではの感動に満ちたもの。

この「Feeling Good」も何度も繰り返し聞いてみたい宝。

 

 

我が青春の ニーナ・シモン

ニーナ・シモンが没して17年が過ぎようとしています。現存していたとしても87歳ですから70歳で亡くなったと知って残念な思いがします。死因が乳がんだった、しかも70歳だったことを知ったのは、亡くなって随分時間が経ってからでした。

 

若いころにLPをたった一枚買い求めてその歌声に魅入られて以来、いつのまにか聴かなくなっていました。

 

 

ニーナ・シモンのことをすっかり忘れたまま40年もの年月が過ぎ、その間にネット社会が訪れ、その気になりさえすればすぐに自宅で彼女の歌声を再び聴き、またその生涯を知る手立てができました。感性豊かな、とされる青春時代に受けた深い感動は、全く変わっていませんでした。

 

天才とは?

やはり、ニーナ・シモンは天才 だったのだ、と今更ながらに再確認しているわけです。

 

むかし私が中学1年生だったころに、中学校の誰もいない図書館でなにかいい本がないかと探していました。「天才とは」という本に目が留まりました。その本を手に取り、パラパラと目次や中身を読んでみると、たちまち不愉快になりました。

 

「女性に天才がいない理由(少ない理由?)」「男性の無能と女性の有能(優秀)とがちょうど同じくらいの知的レベルで…」まだまだ信念や信条が確立されてなかった私は、なかなかその絶望感から這い上がれませんでした。

 

「おかしいなあ。そんなはずないと思うけど。どうしてこんなふうにこの本の作者は断言できるのだろう」と私は思いました。

 

「自分は、なぜ不愉快に思うのか」をこんなふうに本に書かれているくらいの世の中なら、きっと「そのとおりでしょ」「女の子は黙っていればいいのよ」と言われるに違いない、と自分の家庭環境に照らし合わせても、大人や学校の先生に質問してみる気にもなりませんでした。

 

性差別、人種差別、肌の色差別、外見差別、職業差別、出生に関する差別、親がいるいないの差別、経済格差による差別、様々な差別が人類始まって以来未だに解決していない問題ですから、そのころの私に正しい答えを出してくれる人は周りには居なかったでしょう。

 

人類始まって以来この社会の不正に立ち向かっていった勇敢な人たちの歴史があります。

神にその天賦の才能を与えられているか否かに関わらず、どんなちっぽけな人間でも,自分の尊厳を踏みにじられるような経験をしたときに、「おかしい」と反応します。

 

そういう意味で、「天才」であることに間違いのない「ニーナ・シモン」とその音楽と行動に共感し、自分もこうありたい、と思うのは、我々すべての人間が優劣のない、他社に貶められる理由の全くない唯一無二の存在 だからです。

 

「ニーナ・シモン」の歌を含めた音楽性が、他の流行歌にはなかなか感じられない崇高な精神を感じさせてくれるのは何故でしょうか。それに簡単に答えるなら、彼女が自分を偽らないから、とまず言えます。

 

政治的な大きな動きのあった1950年代から1960年代にかけての黒人解放運動と大きくかかわったニーナ・シモンですが、そもそもアフリカから船に揺られて連れてこられた彼らの中には、尊厳を守るために戦って殺されてきた人々が無数にいるわけです。

 

「長い物には巻かれろ」 は嫌なのだ、という気概に溢れたニーナ・シモンのオリジナル曲、カバー曲、の中からまず、この「Feeling Good」をお送りします。

 

「あらゆる世代がニーナ・シモンを再発見しなければならない。彼女は、天才である女性がいることの証なのだから(作家ジャーメイン・グリアの言葉から)

LP(ニーナ・シモン リフレクション)

数少ないLPマイコレクションの中にこんなのが残っていました。このレコードを文字通り擦り切れるほど繰り返し聞いてその歌声に浸りました。

 

 

今、手元にあるニーナ・シモンのLPレコードは「ニーナ・シモン・リフレクション」というもので、1977年発売とあります。

 

Side 1

1.トラブル・イン・マインド (Trouble in Mind)

2.   奇妙な果実 (Strange Fruit)

3.  我が恋人の黒髪 (Black is The Color of My True Love’s Hair)

4.  二アラー・ブレスド・ロード (Nearer Blessed Lord)

5.  ジス・イヤーズ・キッス  (Tjis Year’s Kisses)

6.  ムード・インディゴ  (Mood Indigo)

7.  アイ・ラブ・ユー・ポギー  (I Love You, Porgy)

8.  行かないで  (If You Go Away)

 

Side 2

1. アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー  (I Put A Spell On You)

2. フィーリング・グッド  (Feeling Good)

3. 悲しき願い(Don’t Let Me Be Misunderstood)

4.  ギミー・サム  (Gimme Some)

5.  テイク・ケア・オブ・ビジネス  (Take Care Of Business)

6. ワークソング(Work Song)

7.  ラブ・ミー・オア・リーブ・ミー  (Love Me Or Leave Me)

8.  ドント・エクスプレイン  (Don’t Explain)